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耳に関する症状

突発性難聴

突発性難聴とは名前のとおり急に耳が聞こえなくなり、耳づまりや耳鳴りを伴う疾患である。ストレスやウィルスの感染により内耳の血流が悪くなり発症すると考えられる。この病気になると48時間以内の治療開始が望ましいので、おかしいと思ったらすぐに耳鼻科に行くことが大切である。突発性難聴は適切な治療を受けても症状が完治する確率は約1/3といわれる。その他の群では改善はするものの難聴や耳鳴りの後遺症が残る群と全然、改善しない群に分かれ、特に高音の難聴は治りにくいとされる。突発性難聴は内耳の循環障害が主な原因なので、手術などの外科治療での改善は望めない。

概要

突発性難聴とは、突然に耳が聞こえづらくなる病気。
音や声は耳から入り、「外耳道」という耳の穴を通って、鼓膜に届く。次に音は鼓膜の奥にある「中耳」という空間に伝わり、この中にある3つの小さな骨を振動させ、さらに「内耳」へと届く。内耳には蝸牛(かぎゅう)というカタツムリのような器官があり、ここに音が届くと電気信号に変えられる。この信号が次にある聴神経を伝わり脳に届くことでやっと脳が音や声を認識する。
音が脳に伝わる途中に外耳や中耳でうまく伝わらないで起きる難聴を「伝音性難聴」、内耳や聴神経で何らかの障害が起きている難聴を「感音性難聴」という。また伝音性と感音性の難聴が混在した状態を「混合性難聴」という。
突発性難聴は3つのタイプの難聴の中で感音性難聴に分類される。突発性難聴を発症した場合は、耳鼻科での正確な診断と速やかな治療を行うことが最も重要である。特に発症後、可能であれば48時間以内の治療開始が望ましい。

原因

①ストレス
ストレスと難聴の因果関係はまだ不明である。しかし、突発性難聴を発症した人には精神的ストレス、睡眠不足、肉体疲労などがあったということが少なくないため、ここには何らかの因果関係があると考えられている。一般的にストレスが高くなると交感神経が優位になり、血管は収縮する。つまり、ストレスは血流障害を起こす可能性が高くなるので、その結果、突発性難聴を起こしやすくなるという説である。
②ウィルス感染
他の原因としてウイルス感染という説もある。しかし、突発性難聴を起こす特別のウイルスは、まだ見つかっていない。では、なぜウイルス感染がこの病気の原因として疑われるのかというと、風邪やヘルペスにかかった後に突発性難聴になることも少なくないということが一つ。そして、この突発性難聴の治療に使われるステロイド剤が治療に効果的であるということは、ステロイドの抗炎症作用がウィルスなどによって起きた感染症の炎症を抑えているのではないかと考えられるからである。
③血流障害
血流障害とは、内耳血管で血栓、出血、麻痺などが起こり、そのことがもとで内耳の血流が妨げられて血液が内耳に十分届かず、突発性難聴が起きるという説である。この説が支持される理由の一つとして喫煙者は突発性難聴が治りにくいということがある。紙巻きたばこや加熱煙草内のニコチンを吸引することによって血管収縮が起き、血流障害を来すために喫煙が突発性難聴の治療を遅らせたり、難聴の再燃を促進させるということがある。このことなどからも血流障害は突発性難聴の大きな原因の一つと考えられている。

具体的な症例・状態

突発性難聴の多くは聴力の悪化と改善を繰り返さず、再発はしないと考えられている。しかし、難聴が繰り返される場合には、突発性難聴の症状と似た「急性低音障害型感音難聴」の可能性が高いと考えられる。急性低音障害型感音難聴とは、突発性難聴と同じ内耳の聴神経に障害が起きる感音性難聴だが、特徴としては低音域だけに障害があるものである。
一般的に突発性難聴では、いつから、どのタイミングで難聴が起きたのか、はっきりと自覚できるほどの突然の難聴となることが多い。しかし、症状が軽い場合にはいつごろか分からないこともあるし、また、突発性難聴ではなく急性低音障害型感音難聴であるということもある。突発性難聴の多くは片方の耳に起こることが多いが、まれに両耳が同時に聞こえなくなる時もある。
症状が重い突発性難聴では、耳鳴り、耳詰まり(耳閉感)、めまい、吐き気、嘔吐などの副症状が起きることもある。

代表的な対応法

突発性難聴は明確な原因が見つかっていないため、確実に治る治療法もまだはっきりとは解明されていない。そのため、いくつかの治療が複合的に行われる。基本治療は薬物療法で、複数の薬を組み合わせて用いる多剤併用療法となる。当院では毎日の通院しながらのステロイド、プロスタグランジンを中心とした点滴療法を第一選択としている。ストレスが強い場合には、専門の医療機関に入院しストレスを少なくしたうえでの点滴治療を受けることを勧めている。過去の論文から高気圧酸素療法の効果は懐疑的なので当院では勧めていない。突発性難聴の最善の治療は発症後、できるだけ早くの治療開始につきるので、耳が聞こえにくいと感じたらすぐに、耳鼻咽喉科で適切な検査を行い、点滴などの治療を開始することが望ましい。点滴、注射治療が不可能な場合には内服薬治療をしっかりと続けることが必要となる。
突発性難聴は、適切な治療を受けて難聴が完治する確率は約1/3といわれる。それ以外は改善はするものの難聴や耳鳴りの後遺症が残る群と全く改善しない群に分かれ、特に高音の難聴は治りにくいとされる。突発性難聴は内耳の循環障害が原因なので、手術などの外科治療での改善は望めない。

ディフィブラーゼ点滴療法
ディフィブラーゼ(商品名、バトロキソビン)は血漿フィブリノゲンの値を下げ、血のサラサラ度を上げて血流改善を促すという薬品。当院ではステロイド点滴や注射治療で効果が認められなかった場合の治療として行っている。この治療の効果、改善度は過去のデータからは20-30%の症例で改善をしている。
希望者には全員可能な治療ではなく、施行できない場合もある。それはこの治療が血液の粘度を下げる治療であるため、体内で出血が起きる可能性のある場合には行えない。例えば、身体に出血しやすいところがある、妊婦、手術の前後、アスピリン内服中、歯科治療中、脳血管障害後遺症などという場合である。ただし、女性の場合、月経出血は時間をずらせば可能である。
当院ではこの治療には1週間に隔日で3回(月、水、金または火、木、土など)、1時間ほどの点滴を3週間、約9回行なうが、血漿フィブリノゲンの値によっては前後することもある。
また、脳動脈瘤、脳動静脈奇形などの脳の状態確認が必要なため、この治療希望の方へは脳のMRI、MRA検査が必要となる。
他には治療中、動脈や深部静脈を損傷した場合に重篤な血腫を形成することがあるので、星状神経節ブロック、穿刺、鍼灸治療等の動脈や深部静脈を損傷する可能性のある治療や検査は避けなくてはならないし、怪我を起こしやすい業務、スポーツは休止しなければならない。この治療は大阪大学を中心として勧められたものなので大阪を中心として行われているという経緯がある。他府県での治療を希望される方は一度、受診していただければ最寄りの医療機関を紹介できる場合もある。